コフートの自己心理学が求める幸せに生きるための3つの他者

コフートの自己心理学

コフートの自己心理学は「ひとりじゃ成長できない」というオトノネの考え方に合致しています。コフートは自己の成長、安定のために3つの他者の役割を臨床から見出しました。この三つが合わさって自己を作り上げていくことで、自己肯定感や自信、自己実現が可能になるという考え方です。生き方です。おとのねさんは、この3つの他者を演じることで、お子さんの心を守り、成長を助けます。

  • 1:肯定・承認・正当化・賞賛を与えてくれる他者
  • 2:自分にないもの、不得意なもの、できないものを補ってくれる他者
  • 3:自分に似ている他者、同じ体験をして同じ感情を抱く他者、同じ思考を持つ他者

人は、これらの心理的ニーズを満たさないとうまくやっていけない生き物だ、とわりきって理解するところに、コフートの潔さがあります。これら3つの他者と出会い、関係していくことで自己の充実をさせていくことが、人生をよりよく「生きる」ことになると、コフートはいいます。自己を充実させるとは、自己愛を満たすことであり、自己愛が傷つくのを守る人間関係をつくることが大切だと、コフートはいいます。認めてもらいたい、見てもらいたい、一緒にいたい、もっとよくなりたい、自分にないものを手に入れたい、そういう欲求を肯定して、健全に満たしていこうと腹を括ったのです笑

1:鏡自己対象

小さい時に、お母さんに「みてみて!」とやってきたり、「きいてきいて!」とやってくる子どもの心を満たす自己対象です。 自分が楽しんでいること、一生懸命になっていること、認めて欲しい姿をありのまま認めて、満たすことで、人はさらに、さらに心を落ち着けて成長していくことができます。オキシトシンがでる関係です。

2:理想化自己対象

ああなりたい、こうなりたい、というモデルになる自己対象。弱い部分を助けてくれたり、困難なときに相談をしたり、自分にはないものを補ってくれたりする存在です。勇気をもらったり、パワーをもらえる存在です。テストステロンで頑張る感じです。

3:双子自己対象

自分と似ている、まるで自分を見ているような、同じ立場にいるような感覚になれる自己対象。似ている人といると安心する、元気が出るというアレです。「ああ、あなたも同じことを感じているのですね」「ああ、この人も同じなんだ」と感じられる自己対象。一体感を感じる。

自己の充実

3つの役割をお互いに演じることによって相互依存関係をつくることで自己は充実します。お互いに心理的なニーズを満たし合う関係が健全であれば(人間として尊重し、対等で、自立していれば)、自己は健全に充実していきます。そうすると、安心したり、喜びを感じられます。自己の充実のために必要な養分を、自分で出すのは正直無理です。赤ちゃんにとってのミルクのように、心にも他者(自己対象)という栄養が必要なのです。手をかけ、目をかけ、言葉をかけて「自己愛」を健全に満たすことで、子どもの心は豊かになると、コフートは言っています。「自己の充実」とは、他者に支えてもらうために「他者を心理的にうまく頼る能力を高めよう」「他者とうまくつきあう能力を高めよう」というものです。

「偽正常」

3つの役割が健全に機能せず、不健全に機能する場合、自己疎外が生まれ、不安になり、心がうまく成長していきません。褒められないならやらない、他者に評価されないと生きていけない人、カリスマ的な人に隷属してしか生きられない人、そして、自分と似た者同士と共依存すること(「みんないっしょ」)でしか生きていけない人がその例です。そうして、不健全なんだけど、正常だ!と偽ることをコフートは「偽正常」といいました。

人間関係を学ばず(愛を学ばず)、不健全な自己対象化が行われ、自己が定まらず、欲動(その場しのぎの定期テスト対策)にしたがって生きていくことは「偽正常」です。例えば目の前のテストに追われて心を置き去りにする、数値的・物質的な快楽をもとめる、子どもを自分のおもちゃにする、自分に言い訳をする、愚痴を言う、誰かのせいにする、自分の不安を誰かを不幸にして満たそうとする、生きていて不安、喜びを感じられない、ブランドを買いまくる、あくせく働きまくる(ワーカホリック)などなど。日本に溢れかえっている人たちの姿であり「偽正常」です。

もしも、あなたの周りにそういう人がいたとしたら、できる範囲でグチを聞いてあげてもいし、どこかしらほめてあげてもいい。少しでも、あなたにできるう範囲の安心感を与えて認めてあげることが、彼らを少しずつ変えていくことになるのです。そうすれば、認めてもらった、ほめてもらったと感じた人の「足りない部分」が少し埋まります。埋まってくると、心にも余裕ができてきます。すると、性格も穏やかになってきます。となれば、ほかにもその人と話してみよう、話してみたいと思う人がでてきます。恋人ができる可能性も上がってきます。こうして他者が介入する方法で、人は変わっていけると、コフートは考えたのです。

コフートは、「運」がなかった人たち、すなわち「悲劇の人」たちの治療として、「かつて満たされなかった感情を、もう一度、治療者との間で満たしてあげる」ことで、彼らを救おうと考えました。さらにその治療は、医師でなくてもできるといいいました。いったいどんな治療なのでしょうか。(『自信がなくても幸せになれる心理学』和田秀樹 p.35)

大人の宿題

子どもが自己を充実させる練習をすることを促すために、大人は少なからず、子どもの自己対象として役割を果たすことが大切です。それができない場合、子どもは「一人でなんとか」することになり、勉強どころではなくなります。学校から押し付けられる破壊的な関係によっても同様です。自己の充実のために、子どもを「一方的に」使う大人が多すぎます。子どもが人間として、ひとりひとり「命」を輝かせるには、大人が、宿題をしていくしかないのです。だって、子どもは、大人から学ぶのですから。

フロイトとアドラーとの違い

フロイトは自分の心の中で原因をつきとめて「自分の問題は自分の内部で、一人で解決する。自我を自分で鍛える」と考えます。アドラーは未来志向で、「いつも目的をちゃんともち、また目的に対する解決方法をフレキシブルに変えていくことで、人間というのはいくらでも変わることができる」と考えます。人の強さにフォーカスしています。コフートは、「一人じゃ変われない」と、弱さを肯定します。自己愛が満たされていない多くの人にとって、コフートのアプローチが心のニーズにあっているのではないかと、僕はおもっています。

ボウルビィの愛着理論

ボウルビィの愛着理論をコフートの自己心理学で説明して見ましょう。簡単に言えば、愛着を形成する=鏡自己対象との関係性をつくる、です。大人の愛着障害があるのと同様、コフートの自己心理学は子供から大人まで幅広く適応できる考え方です。ただし、ボウルビィは「発達不全」の現象を説明するために、コフートは「臨床」で役立つために理論を作り上げたと言う違いがあります。どちらも、心の発達のためには、人間がよりよく生きるためには他者との関係性が必要であり、自己愛を満たす必要があり、愛着形成が必要だと言っています。愛着障害、といえば、実の母親が取りざたされますが、コフートによれば、自己愛はどんな人物であっても満たされます。母親でなくとも、別の人との人間関係をつくることで、心が育ちます。

コフート心理学を実践する

「健全な依存」ができる相手との関係をつくりましょう。自己対象として適切な人との関わりを増やし、不適切な人から離れることです。離れ方もいろいろあります。人ではなく、制度(宿題)の場合もあるでしょう。この時、「共感」というプロセスが大切になります。「相手も自己愛を満たしたいんだ」「相手には相手の心の状態がある」ということを知った上で、理解した上で、関係を結び直すということです。学校との関わり、子供との関わり、会社との関わりを見直す、家族のあり方、人との付き合い方を見直すことです。

ポイントは、等身大の自分を認めてくれる人がいるかどうか(認めているということが相手に伝わるかどうか)、です。伝えているつもりになっていて、伝わっていない(もしくは「偽正常」である)ことがけっこうあります。

オトノネに耳をすませる

「共感」とは、相手の立場に立って物事を考えたり、想像してみることです。なぜ共感することが大切か?それは、共感することで、初めて見えてくるものがあるからです。あなたの周りの人を参考に、相手の立場にたって、「この人は、何をいわれたら嬉しいのだろか?」と、改めて考えて見ましょう。(略)相手が「本当は私は、自分のこういうところに中うう目してほしいんだけどな」と思っている、そのニーズをおさえることが重要なのです。相手が「認められたいとおもっているポイント」を見つけて、認めてあげるのです。(『自信がなくても幸せになれる心理学』和田秀樹p.84)


共感するとは、自分があげたいものではなく、相手がほしいものを感じること、
自分の感情ではなく、相手の感情を汲み取ることです。

例えば「勉強できない」というおもいから、なかなか宿題をしてこなかったり、スムーズに進まないことがあるでしょう。それでも時間をかけて、少しずつ、自信をつけて行く。「大丈夫だ」と思えるまで、付き合う。自己対象としておとのねさんと関係を結べる時間を、オトノネは大切にします。お子さんのビートとテンポに合わせていきます。できることから始めるのではなく、できないことから始めます笑(0から、一緒に悩んで、一緒に学んでいきます)

【コフートで絶望するおとのねさん】『<自己愛>の構造』和田秀樹
【自己愛とは何か】コフートの『自信がなくても幸せになれる心理学』和田秀樹

 

自己を充実させる他者は鏡であり、理想となるしなやかマインドセットをもつ

マインドセット

創造的関係をつくる仲間

結婚してしばらくは、自分と異なるパートナーの性格や考え方に戸惑うばかりで、その違い にどう対処すればよいのか、まだよくわかっていない。息の合った夫婦であればだんだん、ど う対処すればよいかがわかってくるし、それを学ぶ中で、互いに成長し、関係も深まっていく。 しかし、このようにうまくいくためには、相手は自分の味方なのだという信頼感が欠かせない。 ローラはほんとうに結婚相手に恵まれたと言える。当初彼 女には、自己中心的ですぐに自己 防衛に走るところがあった。よくわめいたり、ふくれたりもした。けれども、ジェームズはそ れをけっして自分に向けられたものとは受けとらず、彼女がそばにいてくれることにいつも感 謝していた。だから、かっとなった彼女がジェームズに当たっても、彼女の気持ちを鎮めてや り、納得のいくまで話しあうようにした。そうしているうちに、ローラもだんだんとわめいた りふくれたりしなくなった。

こうして、心から信頼できる間柄になると、今度はお互いの成長に大きな関心を払うように なった。ジェームズは会社の設立を志しており、ローラも、その構想を練ったり問題となりそうな事柄を検討したりするのにずっとつきあった。一方、ローラはかねてから童話を書くのが 夢だった。そんな彼女にジェームズは、「とにかくアイデアを文字にして冒頭だけでも書きは じめてみたら」と言って励まし、「だれか知りあいの挿絵作家に連絡をとってみるといいよ」 と勧めた。こんなふうにして、夫婦それぞれがやりたいことを実現し、なりたい自分になれる ように、互いに助けあう関係ができあがっていった。

夫婦の場合と同じように友だちづきあいの中でも、お互いの成長をうながしたり、お互いの 良さを認めあったりということができる。友だちどうしで知恵と勇気を分かちあえば、未来に 向かって踏みだそうという気持ちになれるし、良いところをほめあえば、なくしていた自信 取り戻すことができる。そのどちらも重要だ。だれにでも、とりあえずはめて元気づけてほし いときがある。「彼と別れたの。でも私が悪いんじゃないと言って」「試験で赤点を取ってしま ったの。でも私はバカじゃないと言って」

こういうときにこそ、友だちを励ましつつ、しなやかメッセージを送るチャンスだ。「この 3年間、あなたは本当によくやってきたよね。彼は何の努力もしなかったんだもの、別れるっ て決めたのは正解だと思うよ」「試験のとき、何かあったの? 内容をちゃんと理解してる? 十分に勉強した? 個別指導を受けた方がよさそうかしら?」 (『マインドセット』キャロル・S・ドゥエック p.232)

「苦しいときの友が真の友」ということわざがある。困窮している友人を毎日助けてくれるよ うな人が本当にいるのかどうかは別として、たしかに、この考え方には一理ある。けれども、 困っているときに助けてくれる友人を探す以上に難しいのは、何かいいことがあったときに一 緒に喜んでくれる友人を見つけることではないだろうか。すてきなパートナーにめぐりあえた とき、やりがいのある仕事をもらえたり、昇進したりしたとき、子どもの出来がいいとき、そ の話を聞いて嬉しいと感じてくれる人が実際にどれだけいるだろう。 (『マインドセット』キャロル・S・ドゥエック p.234)

この記事のまとめ

「脳」も「心」もバランスが大切です。

右と左、父と母、テストステロンとオキシトシンのバランスがしあわせをつくる:前頭前野のお父さんとお母さん

前頭葉は大人の脳だというが、実際にお父さんとお母さんがいるらしい。もちろん比喩ですが。

扁桃核が「これは嫌な情動ですよー」という情報を出したとしよう。そうするとその情報は前頭葉のお父さんとお母さんのところにいく。すると右側の前頭前野は「そうだね、これは嫌な情動だね。悩むね。うーん」といい、左側の前頭前野は「いえいえ、これは大したことないですよ、大丈夫ですよ。ほら、空が綺麗ね」という。右側の前頭葉は「嫌」に反応し、左型の前頭葉は「好」に反応する。

そんな掛け合いが、前頭前野で行われている。

うつの感情を「オフ」にするスイッチは、左脳の前頭前野にあると思われる。神経科学者が前 頭葉に障害を受けた患者の情緒的変化を研究した結果、左側の前頭葉に不快な情動を制御する神経のサーモスタットのような働きがあることがわかった。右側の前頭葉が恐怖や攻撃など不快な 情動の座であるのに対して、左側の前頭葉は右前頭葉を抑えてむき出しの情動が表出しないよう にしている。脳卒中の患者を集めて調べてみたところ、左側の前頭葉皮質に損傷を受けた患者には、不安や恐怖で押しつぶされそうだと訴える例が多く認められた。反対に、損傷が右側に起こ った患者は「やたらに快活」で、研究室でテストを受けている最中もすっかりリラックスしてジ ョークを飛ばしまくり、テストの出来など気にもとめない様子だった。さらに、「幸福な夫」の 例もある。この人は脳の奇形を治療するために右前頭前野の一部を切除する手術を受けた。患者の妻が医師にうれしそうに語ったところによると、手術のあと患者は人格が劇的に変わり、以前 のようにいらいらすることがなくなったばかりか、愛情表現がオープンになったという。

つまり、左側の前頭前野は非常に強い情動以外の不快情動を断ち切り、あるいは少なくとも弱める神経回路の一部を担っているらしいのだ。緊急ブザーを鳴らすのが扁桃核ならば、ブザーを 「オフ」にするスイッチの一部が左側の前頭前野なのだ。前頭葉と大脳辺縁系のこうした連繋は、単に情動の微調整にとどまらず、私たちが人生を左右するような決断を下す際にもきわめて重大 な働きをしている。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.52)

こうみると右側が「悪い」ようにも思えますが、現実にはストレスとなる刺激をきちんと感じて、分析して対処する役割を持っているような気がします。ただそれが「しあわせ」に繋がるとはかぎらないのです。

「安全基地」という言葉は幼児期に安心して子どもが「探求」するために必要な心の拠り所を表します。安全基地になる人が実際にいて、安全な感情をもらうことでこの左側の前頭前野が発達するのでしょう。

「大丈夫だよ」という「お守り」は、この場所に作られるのかもしれません。

デイヴィッドソンの研究によると、つらい気持ちで頭がいっぱいになっているとき、人の脳内では 扁桃体と右側の前頭前野が最も活発に活動しているという。陽気な気分のときには、これらの領域は 鎮静化しており、かわりに左側の前頭前野の一部が活性化している。気分によって活動が影響を受け るのは、前頭前野だけだ。腹が立っているときは右側が活発になり、気分のよいときは左側が活発に なる。

しかし、良くも悪くもない中間的な気分のときでも、背景で活動している右前頭前野と左前頭前野 の割合にはその人のふだんの情動傾向がかなり正確に表れている。右側の活動が活発な人は落ちこん だ気分や腹立たしい気分になりやすく、左側が活発な人は機嫌のよいときが多い。(『SQ 生きかたの知能指数』ダニエル ゴールマン p.276)

不安を和らげる左側前頭葉

「問題は、学習によって得た恐怖を解消するのにどのくらいの時間がかかるかだ」という問いを 発するのは、ウィスコンシン大学の心理学者で左側前頭葉が抑うつを弱める役割をはたすことを 発見したリチャード・デイビッドソンだ。デイビッドソンは被験者にあらかじめ大きな音に対す る嫌悪を学習させて――学習された恐怖のパラダイムであり、軽度のPTSDの類似例である ――実験をおこなった結果、左側前頭葉皮質の活動が活発な人ほど学習した嫌悪をはやく克服できることを発見した。この結果も、学習された不快情動を忘れるうえで皮質が重要な役割をはた すことを示唆している。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.316)

楽天的な左側前頭葉

脳が「快不快」のどちらに反応し、どちらのイメージを強く感じるかは、先天的に決まっているようだ。生まれた赤ちゃんも泣く子、泣かない子、よく笑う子、いろいろだから納得できるでしょう。だからこそ「どのような情動的知性を、お守りを身につけたらいいのか」が大切になってきます。

私の叔母のような人たちは、生まれつき楽天的な気性の持ち主だ。反対に、生まれつき気難し く陰気な気性の持ち主もいる。陽気か陰気かは、情動の脳の上層に位置する前頭前野の左右どち らが活発に活動しているかに関係がありそうだ。この見解は、主としてウィスコンシン大学の心 理学者リチャード・デイビッドソンの研究によるものだ。デイビッドソンは、前頭葉の右側より も左側のほうが活発に働いている人は陽気な気性であることを発見した。こういうタイプは人間 第 関係や人生で遭遇するさまざまな出来事を楽しみ、ジェーンのように逆境からすぐに立ち直る人 が多い。一方、右側前頭葉のほうが左側より活発な人は否定的で不機嫌なムードに傾きやすく、 人生の難局に動揺しやすい。ある意味では、こういうタイプが悩みを抱えがちなのは心配や憂う つを断ち切ることができないからだとも言える。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.335)

楽天的だからといって、いいとだけではありません。楽天的すぎて、なんの計画性もなく、せっかくの「人生」をやり過ごしてしまう人もいるでしょう。

悲観的だからといって、悪いわけではありません。慎重だからこそ、より思考を巡らせたり、内省的な活動ができるかもしれません。

バランスをとることが、大事なのです。

バランスが取れていることが、健康としあわせを生み出す

左右のバランスがとれた、「左が右をフォローしてくれる」人生は健康的で、しあわせです。

脳がこのしくみをつくりあげる「基礎」になる幼少期、そして「発展」させる学童期の大切さを感じます。

母親の愛情に包まれて育ち、人間関係に満足し、六十代になっても身体的不調が少ないジルは、五 七年の卒業生の中で、左前頭前野の働きが右前頭前野の働きと比較して最も活発だった。ジルの脳の 活動パターンは、快活な人生を予言していた。

一方、両親がアル中で、自分自身も離婚を経験し、からだの不調を多く訴えていたジェーンの脳 ジルとはまったく逆の活動パターンを示していた。卒業生の中で、右前頭前野の働きが左前頭前野の 働きと比較して最も活発だったのだ。このパターンは、ジェーンが人生に対して強い不快ストレス反応を示しやすく、不快な情動から回復するのも遅い、ということを示唆している。 (『SQ 生きかたの知能指数』ダニエル ゴールマン p.349)

この記事のまとめ

人は、ひとりでは成長できないのです。

しあわせは、他者からもたらされる:自己の充実・自分を高める条件

心を守るには、自分を大切にするには、誰かがいなくてはいけない。

心理学者コフートの言ったように、〈自己の充実〉のためにはどうしても他者が必要なのです。人間は他者がいないとしあわせになれない生き物だと、割り切ることでしょう。

https://otonone.com/ura/kohut.html

他者との情動的な関係

会話のない生活は、健康に有害だ。反対に、親しい人間関係は健康を守る要因のひとつだ。過 去二十年にわたり三万七千人以上を対象におこなった調査から、社会的な孤独――私的な感情を 共有し親しく付き合える相手がいないという感覚は病気や死の確率を倍にすることがわかっ ている。Science 誌の一九八七年のリポートは、社会的孤独を「喫煙、高血圧、高脂血症、肥 満、運動不足と同等に死亡率に寄与する要因である」としている。事実、喫煙の死亡リスク係数 は一・六だが、社会的孤独の死亡リスク係数はそれを上回る二・○なのだ。

社会的孤独は女性よりも男性に大きな害をおよぼす。男性の場合、社会的に孤独な人の死亡率 は親しい人間関係に恵まれた人の二倍ないし三倍にのぼる。女性の場合、この数字は一・五倍程 梁度にとどまる。社会的孤独のインパクトが男性と女性で異なるのは、女性の場合ひとつひとつの人間関係が情緒的に親密だからかもしれない。同じように数少ない人間関係しかなくても、男性 より女性のほうがその少ない人間関係からより多くの慰めを得られるのだろう。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.273)

他者と関わる能力はEQです。自分のしあわせ、魂の世話をするためにも、EQは必要になるのです。

破壊的な関係から離れる、というのも、スキルの一つです。

404 NOT FOUND | ウラオトノネ

人を変えることは難しいかもしれません。けど、健康的な暮らしのためにも、関係性を調整する、「自分はこうする」という人間関係の指針をつくると、いいかもしれません。

人間関係の「数」に加えて「質」もストレス緩和のカギを握っている。不快な人間関係は有害 に働く。たとえば、夫婦げんかは免疫機能に有害なインパクトをもたらすことがわかっている。 大学寮のルームメート同士の関係について調べた研究からは、気の合わないルームメートと暮らS している学生ほど風邪やインフルエンザにかかりやすく医者へ行く回数も多い、という結果が出 ている。この研究をおこなったオハイオ州立大学の心理学者ジョン・カチオッポは、次のように 話している。「健康にいちばん決定的な影響をおよぼすのは、人生で最も重要な人との関係、毎 日毎日顔を合わせる人との関係です。その人との関係が自分にとって重要であればあるほど、健 康への影響も大きくなります」。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.275)

例えば、会社の中で、自分を搾取してくる人に対して、どうたち振る舞うのか。逆に利用してやるのか。そういったスキルは、一人一人の魂、心構えで異なってきます。

メンターを見つける。「先生」を見つけることで成長する。『残酷すぎる成功法則』

残酷すぎる成功法則

有望な弟子こそ、多くの師を持つべきだ。誰を模範にすべきかという場合にも、同じことがいえる。多くの師を個人的成長の基礎とするほうが、才能ある若者は、ただの模倣という自滅的な道をたどらずに済む。 そのかわり彼らは、その修練で学んだ多様性を一つに統合することを余儀なくされる。多様な技法やスタイル、発想を一つにまとめ上げること が、弟子が高い評判を得る伴となる。 

この話を締めくくる前に、もう一つのよくある反論についてふれてお きたい。おそらくあなたは、すでに熟達した技を身につけているかもしれない。そして、すでに年季を重ねているので、メンターはもう必要な いと思っているかもしれない。だが、それは間違いだ。

アトゥール・ガワンデは内分泌外科医で、ハーバード大学メディカル スクールの教授である。『ザ・ニューヨーカー』誌のスタッフ・ライ ターでもあり、ベストセラーとなった四冊の著者でもある。オックス フォード大学のローズ奨学金、およびマッカーサー基金から「天才賞」 を送られた経歴も有する。結婚していて三児の父でもある(彼の経歴を 見るたびに、自分はいったいこれまで何をしてきたんだと考えさせられ る)。そのガワンデが二〇一一年に、次に絶対やるべきこととして、何を思い立ったか? コーチを得ることだ。つまり、彼を向上させてくれる誰かを探すことだった。

ここまで完成している人物が自分を改善するために助けを必要とする なんて、皮肉な話(もしくはワーカホリックのやりそうなこと)だと思 うだろう。だが、ガワンデの考え方は違った。プロのアスリートには必 ずコーチがついている。多くの場合、フィットネス、ダイエット、また は試合に関連するほかの面について、といったように多数の専門家を雇っている。

たとえば野球を生業としている者がその仕事を真伨に受け止め、多くのプロの指導を仰いでいるとしたら、毎日人びとを手術している外科医 も当然そうすべきなのではないか?

そして、高名な外科医であるロバート・オスティーンが引退を撤回 し、手術室でノート片手にガワンデの背後に立つことを承諾してくれた ときに何が起こったか? 「天才賞」受賞者が、些細なミスをこと細か に指摘されるのを謙虚に受けとめた結果、どんな成果が得られたか──なんとガワンデが執刀した患者の、術後合併症の数が減少した。すでに偉 大な外科医が、なおその腕を上げたのだ。

私たちには必ず、ほかの誰かから学べるものがある。その過程で生涯 の友が得られるのもまた素晴らしい。ジャド・アパトーは情熱を抱い た、孤独な少年だった。そこで、彼は小さな賭けをして、潜在的なメン ターに会いに行き、素晴らしい収穫を得た。(『残酷すぎる成功法則』エリック・パーカー)

誰かに思いやられること・誰かを思いやることが健康の秘訣。『マインドフルネスストレス低減法』

 

マインドフルネスストレス低減法

お世話をすること。されること。

この二十年のあいだに、アメリカを初め各国で、このような関係を証明する大規模な調査が行わ れてきましたが、いずれも人との結びつきと健康とのあいだには関係があるということを証明する ものばかりです。その人の社会的相互作用の程度は、結婚しているかどうか、家族や友人との交流 の仕方、教会活動への関わり方、所属しているグループの数などによって判断できます。そして、 社会的相互作用の度合いが低い人は、高い人に比べて、その後十年間の死亡率が二倍から四倍も高 いという結果が出ています。この死亡率というのは、年齢、病歴、収入、喫煙習慣、アルコール消費量、運動量、人種などをすべて考慮したうえでの数字です。

こうした結果がでる理由を示す調査もたくさん行われています。メリーランド大学のジェーム ズ・リンチ博士は、著書『ザ・ブロークン・ハート、ザ・メディカル・コンシクエンス・オブ・ロ ンリネス (こわされた心、さびしさに関する医学的結論)』の中で、「肉体的な接触によって、ある いはほかの人がいるというだけでも、心臓機能やストレス反応を鎮めることができる」と書いてい ます。リンチ博士は、心筋梗塞をわずらった人を対象に行った別の調査で、ペットを飼っている人 は、ペットがいない人よりも長生きする傾向がある、としています。たかが動物であっても、一緒 にいるだけで血圧が下がるというわけです。

人間が動物と一緒に暮らすということは、人間にとってだけではなく、ペットにとってもいい影響を与えます。リンチ博士によると、犬や猫、馬、兎などがストレス状態におちいったときに、人間に可愛がられると、ペットの心臓の負担が減るそうです。

オハイオ大学の研究者たちは、あるとき、兎に心臓病を誘発するために、高脂肪、高コレステ ロールの食事を与えていました。ところが、低い棚に置いた籠に入っていた兎は、高い棚の兎に比べて心臓病の症状が軽いということが判明したのです。どの兎も、遺伝子的には同じで、同じもの を食べ、同じように扱われていたにもかかわらず、なぜ高い場所と低い場所で違う結果がでたのかはわかりませんでした。やがて、一人の研究者が、鬼たちは完全に同じ方法で扱われていたわけで はないということに気がつきました。チームの一人が、ときどき、低い位置の籠の兎を取りだしては、なでたり、話しかけたりしていたことがわかったのです。

そこで今度は、同じ高脂肪、高コレステロールの食事を与えながら、可愛がる兎と放っておく兎 とに分け、計画的にこの実験を行ってみることにしました。その結果、愛情を注いだ兎はことごと く、放っておかれた鬼よりも心臓病に対する抵抗力が強いということが明らかになったのです。病 状は、放っておかれた兎より六〇パーセントも軽いという結論がでたのです。正確を期するため に、同じ実験をもう一度行いましたが、結果はまったく同じものでした。 (『マインドフルネスストレス低減法』J.カバトッジン p.353)

 

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