『残酷すぎる成功法則』凹凸ある命に責任を持って自分を表現していく。

成功するための法則:残酷すぎるほど、科学的な真実。

残酷すぎる成功法則

自分の姿をきちんとみつめる

ゴータム・ムクンダとリーダーシップの理論について話を交わしたの ち、誰もが知りたがっているあからさまな質問を投げかけてみた。 「人生でもっと成功するために、この理論をどう役立てたらいいでしょ う?」 

二つのステップがある、と彼は答えた。

まず第一に、自分自身を知ること。古代デルポイの神殿の石に「汝自 身を知れ」と刻まれていたのをはじめとして、この言葉は歴史に何度と なく登場する。

あなたがもし、ルールに従って行動するのが得意な人、首席だったり 成績優秀で表彰されたことがある人、「ふるいにかけられた」リーダー なら、その強みに倍賭けするといい。 

自分を成功に導いてくれる道筋があることをしっかり確認しよう。実 直な人びとは学校、あるいは、明らかな答えや既定のコースがある場所 で功績をあげられるが、決まった道がないところでは、かなり苦戦する ことになる。調査によると、失業したとき、彼らの幸福度は、そこまで 実直でない人びとに比べ、一二〇%低下するという。道筋がないと迷子 になってしまうからだ。

どちらかというと規格外で、アーティストなど「ふるいにかけられて いない」タイプだったら? その場合、既存の体制に従おうとしても、 成果が限られるかもしれない。それよりは、自分自身で道を切り開こう。リスクをともなうが、それがあなたの人生だ。 

自分を改善することは大切な心がけだが、私たちの根本的な個性はそ れほど変化しないことが研究でも示されている。たとえば話すときの流暢さ、適応性、衝動性、謙虚さなどは、幼少期から成人期を通してほぼ 変わらない。

マネジメントに関しておそらく世界で最も影響力のある思想家のピー ター・ドラッカーも、著書『明日を支配するもの─二一世紀のマネジメ ント革命』(ダイヤモンド社)のなかで、まさにムクンダと同じことを 指摘している。すなわち、仕事人生(さまざまな職種、多様な業界、ありとあらゆるキャリアに及ぶ)で成功するには、「自分を知る」の一言 に尽きる。とくに、自分が望むことを人生で成し遂げるためには、何よ りも自分の強みを知ることだ、と

ときどき、誰もが羨ましくなるような人がいる。自信満々で何かをやり始め、自分は必ずこれを極めると宣言し、その通り平然とものにす る。だがそこには秘訣がある。彼らとてすべてが得意というわけではな い。自分の強みを心得ていて、それに合うものを選んでいるのだ。この手際について、ドラッカーは次のように述べている。

自分の強みを知っていれば、仕事の機会やオファー、あるいは任務を 与えられたとき、あなたはこう言えるでしょう。「はい、できます。た だし、私の仕事のやり方はこうで、仕事の組み立て方はこうです。人と の関わり方はこうなります。与えられた期間内で、私が約束できる仕事 の成果はこういったものになります。なぜなら、これが私という人間だからです」。

多くの人びとがこの段階で手こずる。自分の強みが何なのか、はっき りわからないのだ。ドラッカーは役に立つ定義を教えてくれている。

「自分が得手とし、一貫して望んだ成果が得られているものは何か?」

さらにドラッカーは、自分の強みを見つける効果的な方法として 「フィードバック分析」なるものを薦めている。とても簡単だ。仕事を 始めるとき、自分が期待する成果を書きとめておき、後日、実際の成果 を書き込んで見比べる。これをくり返すうちに、自分が得意なこと、不 得意なことがわかるようになる。

自分が「ふるいにかけられた」タイプと「ふるいにかけられていな い」タイプのどちらに属すのかを知り、自分の強みがどこにあるかを理 解するだけでも、成功と幸福の達成に向けて、一般の人を大きくリード するといえる。 今日のポジティブ心理学の研究でも〝シグネチャー・ストレングス その人なりの強み〟を強調する ことが、幸せを手にする伴であることが何度も証明されている。さらに 言えば、ギャラップ調査でも、日常生活で自分が得意なことに費やす時 間が多ければ多いほど、ストレスが軽減され、よく笑い、周りから敬意 を払われているとより強く感じると証明されている。

環境を選ぶ

自分のタイプと強みを知ったら、次はどうすればいいか? 第二のス テップとして、ムクンダは「自分に合った環境を選べ」と語った。

自分を成功に導く環境を選びだす必要があります。コンテクストは非常に重要。ある状況で目覚ましい成功をおさめた「ふるいにかけられていない」リーダーは、ほぼ例外なく、別の状況では悲惨な失敗を遂げる ことになります。彼らはついついこう考えます。「私はいつでも成功してきた。私はいつも成功者であり、私は私ゆえに成功してきた。だから、この新しい環境でもきっと成功するだろう」と。でも、それは間違いです。あなたが成功できたのは、たまたまあなたの性質や先入観、素 質、能力のすべてが、その環境で成功を生みだす要素にそっくり当ては まったからなのです。 

自分にこう問いかけてみよう。

「私ができることを高く評価してくれるのは、どの会社、組織、状況だろう?」 

誰しも環境から受ける影響は大きい。ルールに従うのが得意で真面目 な首席タイプがよくつまずくのも環境が原因だ。これといった情熱や、 とくに喜ばせたい対象がなくなり、選択も自由となると、間違った方向 へ行きかねない。卒業生首席たちのその後を研究したカレン・アーノル ドは言う。「首席だったなら自分のことは立派にやれるだろうと世間は 考えるが、勉強でAが取れていたからといって、学業での成果を仕事での功績に転換できるとは限らない」。

調査によれば、あなたが「ふるいにかけられた」医師だろうが、「ふるいにかけられない」破天荒なアーティストだろうが、どの〝池〟を選 ぶかが極めて重要だ。ハーバード・ビジネススクールのボリス・グロイ スバーグ教授は、ウォールストリートの敏腕アナリストたちが競合会社 に転職すると、トップアナリストの座から転落することに気がついた。

なぜか?

一般に、専門家の能力はもっぱら本人特有の技能によるものと考えら れ、環境の力は見過ごされがちだ。たとえば、専門家本人が周囲の内情を知り尽くしていること、彼らを支えてくれるチームの存在、一緒に働 くうちにつくり上げた簡潔な伝達法、などといった要素だ。それを裏づ けるように、グロイスバーグは、花形アナリストが自らのチームを率い て転職した場合、そのままトップの業績を維持していることを発見した。

私たちが〝池〟を賢く選択すれば、自分のタイプ(ふるいにかけられ た/かけられていない)、強み、環境(コンテクスト)を十二分に活用 でき、計り知れないプラスの力を生みだせる。これこそが、仕事の成功 に直結するものだ。しかも、こうした自己認識は、あなたがその気にな ればどんな場所でもプラスの力を生みだすことができる。

神経質傾向が強い異端の政治家チャーチルが英国首相になれた「環境」

残酷すぎる成功法則

ウィンストン・チャーチルはイギリスの首相になるはずがない男だっ た。

〝すべて完璧にこなす〟政治家とほど遠い彼が首相に選ばれたことは、 衝撃的な出来事だった。たしかに切れ者ではあるが、その一方で偏執的 で、何をしでかすかわからない危険人物というのがもっぱらの世評だったからだ。 チャーチルは二六歳で英国議会議員になり、政界で順調に頭角を現し たが、次第に国家の要職には適さない人物だと見られるようになった。 六〇代を迎えた一九三〇年代ともなると、その政治的キャリアは事実上終わっていた。いろいろな意味で、チャーチルは前任者のネヴィル・ チェンバレンの引き立て役に甘んじていた。チェンバレンといえばすべ てを完璧にこなす、まさに典型的なイギリス首相だったからだ。

イギリス人は、首相をうかつに選んだりはしない。たとえばアメリカ の大統領と比べて、歴代の首相は概して年長で、適性を厳しく吟味され て選ばれるのが通例だ。異例の早さで権力の座に上りつめたジョン・メ ジャーでさえ、アメリカ大統領の多くに比べ、首相職への備えができて いた。

チャーチルは、異端の政治家だった。愛国心に満ち溢れ、イギリスへ の潜在脅威に対してパラノイア的な防衛意識を貫いた。ガンジーさえも 危険視し、インドの自治を求める平和的な運動にも猛反対した。チャーチルは自国を 脅かすあらゆる脅威に声高に騒ぎたてるチキン・リトル (臆病者)だったが、まさにその難点ゆえに、歴史上最も尊敬される指導者の一人となった。

チャーチルはただ独り、早い段階からヒトラーの本質を見抜き、脅威と認識していた。一方チェンバレンは、ヒトラーは「約束をしたら、そ れを守ると信じられる男」という考えで凝り固まっていたので、宥和政 策こそナチスの台頭を抑える方策だと確信していた。ここぞという重大 な局面で、チャーチルのパラノイアが本領を発揮したといえる。いじめっ子に弁当代を渡したら最後、もっと巻き上げられるだけだ、奴の鼻 を一発ぶん殴らなければならない、と見抜いていたのだから。 チャーチルの熱狂的な国防意識──危うく彼の政治生命を滅ぼしかけた ──は、第二次世界大戦前夜のイギリスになくてはならないものだった。 そして幸運にも国民は、手遅れになる前にそのことに気づいた。

(略)

宥和政策の失敗を見た英国民が、「もっと良いチェンバレンを」と、 同じ従来型の首相を求めていたら、見るも無残な結果になっただろう。 彼らが必要としたのはもっと 、 、 、「ふるいにかけられた」リーダーではな く、システムがこれまで締めだしてきた規格外のリーダーだった。伝統 的なやり方が通用しなかったのに、同じパターンをくり返したら悲惨な 結末になる。ヒトラーのような敵を倒すには、異端のチャーチルこそが 最適だったのだ。 

「ふるいにかけられていない」リーダーはなぜインパクトが大きいの か? とムクンダに尋ねたところ、ほかのリーダーと決定的に異なるユ ニークな資質を持つからだと答えてくれた。ただし、「並外れて賢い」 とか、「政治的に抜け目ない」わけではない、とも。

ユニークな資質とは、日ごろはネガティブな性質、欠点だと捉えられ ていながら、ある特殊な状況下で強みになるものだ。そうした資質は、 たとえばチャーチルの偏執的な国防意識のように、本来は毒でありなが ら、ある状況下では本人の仕事ぶりを飛躍的に高めてくれるカンフル剤 になる。

 

多動?軽躁病?外向性が高い人、刺激を求める人の命が燃える場所

積極的に攻めまくるシリコンバレーの起業家といえば、現代を象徴す る成功者というイメージだろう。思いつくままにそのイメージを並べれ ばこんな感じだろうか? エネルギーの塊、リスクを冒す、 短時間睡眠者、ばかげた行為を容認しない、自信とカリスマ性がある、 果てしなく野心的、衝動に突き動かされ、片時もじっとしていない……。

まさにこれらの特性は、軽躁病の症状としても知られている。しかも ジョンズ・ホプキンス大学の心理学者、ジョン・ガートナーによる研究 は、これがたんなる偶然でないことを示した。本格的な躁病患者は、社 会で働くことが難しい。しかし軽躁病は、ゆるくでも現実と結びつきな がら、目標に向かって片時も休まず、興奮状態で、衝動のままに突き進む仕事人をつくり出す。

 

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