【自然な子育て】とは何かー学者たちの出した簡単な答えー


『私たちは子どもに何ができるのかー非認知能力を育み、格差に挑むー』ポール・タフ

逆境によるストレスが、発達段階の体や脳にダメージを与えるのである。(略)人間の整理システムは急を要する身体的な非常事態に反応するように進化してきたものである。しかし、私たちは住宅ローンや人間関係や昇進について心配することでそのシステムを何ヶ月者あいだ使い続ける。こうした整理システムの使い方は効率が悪いだけでなく、きわめて有害でもある。その証拠はここ15年以上の間に多く発見されている。HPA軸に、とくに幼少期に負荷を与ええすぎると、長期にわたる深刻な悪影響が体にも、精神にも、神経にもさまざまに出てくるのである。しかしこのプロセスがややこしいのは、わたしたちをかき乱す原因がストレスそのものではないてんだ。原因は、ストレスに対する反応にある。(略)マキューエンによると、ストレスを管理するプロセスこそがー彼はこれを「アロスタシス」と名づけたー体を損なう要因なのである。(『成功する子・失敗する子-何が「その後の人生」を決めるのか』ポール・タフp.44)

アロスタティック負荷を表す数値は厳然たる医療データを反映したものー子ども時代の逆境が実際に体に及ぼした影響、つまりは皮膚の下、体の奥底に刻み込まれたものーなのである。(『成功する子・失敗する子-何が「その後の人生」を決めるのか』p.49)

どういうことかといったら。

小さいとき、お母さんはー赤ちゃんが泣いた時に抱きしめてあげるように、ぬれたおしめを取り替えてあげるようにーストレスを処理するプロセス通じて、子どもにストレス対処法を伝えているということ。

それは「大丈夫だよ」という一言かもしれない。

毛づくろいすること。
抱きしめてあげること。

やさしくあたたかく
日に日に成長していく子どもの心を尊重する心をこめて

環境による影響の中で子供の発達を最も左右するのは、ストレスなのだ。子供たちは、いくつかの環境要因によって、
長気にわたり不健全な圧迫を受け続けることがある。こうしたストレス要因が子供の心を体の健全な発達を阻害する度合いは、従来の一般的な認識よりもはるかに大きい。
逆境は、とくに幼い時期ほど、体内の複雑なストレス反応のネットワークー脳と免疫システムと内分泌システム(コルチゾールなどのストレスホルモンを作り、放出する内分泌腺)を結ぶネットワークーの発達に強い影響を及ぼす、特にこの時期にネットワークが環境からの信号に敏感に反応するのは、これからの先の長い人生において何に備えるべきか、体に知らせる信号を常に探しているからだ。この先の人生が困難であることが信号によって示されれば、ネットワークはトラブルに備えるための反応をする。血圧を上げ、アドレナリンの分泌を増やして警戒を高める。
短期的に見れば、特に危険な環境では利点もある。「闘争・逃走反応」とも呼ばれる脅威検知システムが作動し、つねにトラブルに備えている状態なので、すぐに反応できる。このように、危険な環境への適応の発達には確固たる理由があるのだ。しかしこの適応が長期にわたってつづくと、かずかずの生理的な問題の引き金ともなる。免疫系がうまく働かなくなり、体重増加の一因となる代謝の変化が起こって、のちに喘息から心臓病までさまざまな病気を引き起こす。さらに厄介なことに、ストレスは脳の発達にも影響を及ぼす可能性がある。とりわけ幼い時期に経験した高レベルのストレスは、前頭前皮質、つまり知的機能を司る最も繊細で複雑な脳の部位の発達を阻害し、感情面や認知面での制御能力が育つのを妨げる。
感情面で見ると、幼い時期に慢性的なストレスを受けた子供はーいまでは大勢の研究者がこれを有害ストレスと呼ぶがー失望や怒りへの反応を抑えることに困難を覚えるようになる。小さな挫折が圧倒的な敗北のように感じられ、ほんのすこし軽く扱われたように感じただけでも深刻な対立関係に陥る。月皇生活では、つねに脅威を警戒し続ける強度に敏感なストレス反応尻手むは、自滅的な行動パターンを引き起こす。けんか、口答え、教室内でのわがままなふるまい。もうすこし目立たないものとしては、クラスメートとのつながりをつねに警戒し、教師や大人から差し伸べられた手を拒むようになる。
認知面でみると、不安定な環境で育ち、そうした環境が生む慢性的強いストレスにさらされた場合、前頭前皮質が制御する、実行機能と呼ばれる一連の能力の発達が阻害される。実行機能は、脳の働きを監督する航空管制官のチームに例えられることのある高次の認知的能力ー作業記憶、自己調整、認識の柔軟性などを含むものーで、これが発達のための神経系の基盤となり、粘り強さやレジリエンスといった非認知能力の支えとなる。不慣れな状況を切り抜けたり、新しい情報を処理したりする際に非常に役立つ、まさに日々の学校生活で求められる能力である。この実行機能がきちんと発達していないと、複雑な指示に集中できず、学校生活にいつも不満を抱くようになってしまう。(『私たちは子どもに何ができるのかー非認知能力を育み、格差に挑むー』ポール・タフp.28)

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ストレスが、子どもの天の才を潰してしまう。

お母さんが子どものストレスを、癒し続ける。それが自然な子育てだ。
子どもはもう、世の中から十分なほどに、ストレスを与えられているから。

たまに、お母さんが子供にストレスを与えていることがある。
子供は別のところで、ストレスを自分で、何かしらの方法で、癒すしかない。もしくは、溜め込むか。

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実行機能の働きを試すテストとして有名なものにストループ・テストがある。緑色の文字で書かれた「赤」という単語を見せられ、単語は何色で書かれていましたかと尋ねられる。赤、と答えないためにはいくらか努力が必要で、とっさに赤といいそうになる衝動に抵抗する時に使っているのがこの実行機能なのだ。これはとくに学校で大事なスキルであるといえる。子供たちはつねに矛盾した情報に対処することを求められるからだ。Cという文字はKとおなじように発音されるーSのように発音されない限りは。taleとtailは、発音は同じだが意味が違う。「ゼロ」という概念にはそれ自体にひとつの意味があるが、「1」と並べると全く別の意味を持つ。こうした多種多様なトリックや例外を飲み込むには、物事を認知する際の衝動の抑制がある程度求められる。これは神経学的には感情面の衝動の抑制ーお気に入りのおもちゃの車をほかの子にとられるときに、叩くのを我慢する能力ーと関連のあるスキルだ。(『成功する子・失敗する子-何が「その後の人生」を決めるのか』p.51)

これはいわば、ルールを飲み込むチカラ。
あそんでいる時に気に入らなくなって「ルールだから!」といわれて、「じゃぁもうやめる!」といって抜けるのと同じかもしれない。
ただ、学校で教わる内容(753システムに基づいた画一的学習内容)が、その子の発達にあっていないだけかもしれないけれども。

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はい、また重要なところです。

実行機能のスキルの中に、短期記憶(ワーキングメモリ)というものがある。今日スーパーマーケットで何をするか、メモをせずに覚えているような記憶だ。学校のお勉強をする上では欠かせないスキルである。で、サイモンという人が実験して手に入れたワーキングメモリの働きを測定した結果を「サイモンのスコア」として次の文を読んでほしい。

エヴァンズトシャンベルクの発見によれば、貧困層の少年が受ける不利益としてはアロスタティック負荷が大きいということの方が重要である。もし別の貧困層の少年がやってきて、その少年の方がアロスタティック負荷が小さかったらー理由はどうであれ、貧しくともストレスの少ない子供時代を送っているとしたらーサイモンの競争で裕福な家の子供と同程度のスコアを出す可能性は十分にある。そしてなぜサイモンのスコアが大事なのかといえば、高校にも大学にも職場にも、ワーキングメモリが成功の鍵となる作業が山ほどあるからだ。(『成功する子・失敗する子-何が「その後の人生」を決めるのか』p.54)

つまるところ、貧しいから学業成績がでるのではなく、貧しいからストレスがかかり学業が下がるのである。貧しくてもストレスがかかっていなければ、適切な環境次第で、裕福な人と同等の学業成績を残すことができる。

ストレスから子どもを解放する。
これがまず、大切だということ。

お母さんが子どものストレスを、癒し続ける。それが自然な子育てだ。

そして自然な子育てをするための知恵と振る舞いを、僕は、愛と呼んでいる。
愛とは何か?


今年の四月に出たばかりの本。
翻訳されることになるだろう。
その前に僕は読んで、「お母さんと子どもの交換日記」をつくろう。
Coaching Parents of Vulnerable Infants: The Attachment and Biobehavioral Catch-Up Approach

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学校ではなく、お母さんから学ぶことの大切さ

『成功する子・失敗する子-何が「その後の人生」を決めるのか』ポール・タフ

生後1ヶ月ほどの間、泣いた時に親からすぐにしっかりとした反応を受けた乳児は、一歳になるころには、泣いても無視された子供よりも自立心が強く積極的になった。就学前の時期には同様の傾向がつづいた。つまり、幼児期に感情面での要求に対して親が敏感に応えた子供は自立心旺盛に育った。エインズワースとボウルビイの主張によれば、親からの暖かく敏感なケアは子供が外の世界に出てゆけるための「安全基地」となるのである。(『成功する子・失敗する子-何が「その後の人生」を決めるのか』p.68)

子どもたちの高校生活を追ったところ、どの生徒がきちんと卒業するかを予測する際に、知能検査や学力テストの得点よりも、幼少期の親のケアにかんするデータの方が精度が高かった。(『成功する子・失敗する子-何が「その後の人生」を決めるのか』p.75)

どちらのケースでも、子供が生後まもないうちに親として特定の役割を果たした母親が一定の割合で存在した。そしてその行動ーラットの場合にはなめたり毛づくろいをしたりすること、人間の場合には幼児のサインに敏感に反応することーが子供たちのあげる成果に対して永続する効果を及ぼしている点が共通している。人間でもラットでも乳児のうちに適切な世話を受けた者は、のちにより好奇心や自立心や自制心を持ち、障害にもうまく対処できた。幼少期の育児における母親からの注意深いケアが、ストレスから身を守るためのレジリエンスを育んだ。人生においてふつうに起こりうる困難な事態に直面したとき、何年も後になってからもーオープンフィールドテストや、幼稚園での我の強い子供とのけんかなどからわかるように、人間もラットも同様にー自分なりの主張を行動に移し、自信を持ってまえに進むことができたのである。(『成功する子・失敗する子-何が「その後の人生」を決めるのか』p.76)

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貯められたストレスが、前頭葉の成長を阻害する。
それはセルフコントロール、ストレスマネージメント能力の発達の阻害要因になる。
『私たちは子どもに何ができるのかー非認知能力を育み、格差に挑むー』ポール・タフ

ストレス心理学者たちも、この現象を生物的な側面から説明している。脳の中で幼少期のストレスから最も強く影響を受けるのが前頭前皮質、つまり自分をコントロールする活動ー感情面や認知面におけるあらゆる自己調節機能ーにおいて寿湯代な役割を果たす部位である。このため、ストレスに満ちた環境で育った子供の多くが、集中することやじっと座っていること、失望から立ち直ること、指示に従うことなどに困難を覚える。そしてそれが学校の成績に直接影響する。抑えることのできない衝動に圧倒されたり、ネガティブな感情に悩まされたりしていれば、アルファベットを覚えるのもむずかしい。(略)多くの場合、ストレスの影響はおもに思考を制御する能力を弱めるかたちで出る。これは「実行機能」として知られる、認知をつかさどる特定の機能が前頭前皮質にあるからだ。(『成功する子・失敗する子-何が「その後の人生」を決めるのか』p.49)

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