文学部の模範解答例

慶應義塾大学文学の小論文模範解答例【出題者が「うまく反論せよ」と言っている】

慶應義塾大学文学の小論文解答例【出題者が「うまく反論せよ」と言っている】


 

次の文章を読み、テクノロジーによる人類の改変についてあなたの考え を述べなさい。(320字以上400字以内)

課題文

テクノロジーを駆使して人類の改変を進めようという考え方は、近年、トランス ヒューマニズム (transhumanism)と呼ばれている。その基本的な発想は、科学と 技術によって、現在の人間が持っているさまざまな制約や限界を乗り越え、人間の進 化を押し進め、加速させようというものだ。トランスヒューマニズムを支持する人び とは、ヒューマニティ + という協会を結成している。そのホームページには、彼らの 基本的な思想をまとめた、八箇条からなるトランスヒューマニスト宣言が掲げられて いる。その第一条は、「将来、科学と技術によって人間性には深い変化がもたらされる。 われわれが思い描いているのは、老化、認知的な欠陥、意に反する苦しみ、地球への 幽閉を克服することによって、人間の持てる力を拡張する可能性だ」と述べ、第二条 は、「人間の可能性の多くはまだ実現していない。人間のあり方が改善される過程を 描く現実味のあるシナリオのなかには、素晴らしく、追求に値するものが複数ある」 と主張する。

【鈴木貴之『100年後の世界-SF映画から考えるテクノロジーと社会の未来』 (化学同人、2018年)より。引用に際して省略・編集した部分がある]

 

おとのねさんの解答プロセス

メモ

人類の改変をテクノロジー(科学と技術)を駆使して行う。
=現在の人間が持っているさまざまな制約や限界を乗り越えて、人間の進化を推し進める。
=トランスヒューマニズム

現状

自問自答タイム「読み取る」「踏まえる」時間

第一条
「人間性には深い変化がもたらされる」現在もうすでに変化してない?

「人間の持てる力を拡張する可能性」って何?
=「人間のあり方が改善されること」

「踏み込めて」いないこと
人間の進化とは何か。
人間のあり方が改善されるとは何か。
人間の持てる力とは何か。
人間性とは何か。

「共通認識」

 

削除
仮に不死身になったとして、今度は不死身であるがゆえの苦しみが生まれるだろう。例えばファウストのように。

テクノロジーは人間が人間であることの制約を少なくする。だが、必ずしも人間のあり方を改善しない。

では、どうすれば人間のあり方は改善するのだろうか。
仮に苦しみを感じなくて済むテクノロジーが生まれたとしたら、果たしてそのテクノロジーによって改変された人間は「人間」であろうか。

しあわせとは何か

答え

《表明》「伝えたいこと」
人間はさまざまな制約や限界をもっていることは事実である。その制限を乗り越えて人間の持てる力を拡張することがトランスヒューマニズムの基本的な思想であるという。だが、科学と技術を用いるだけでは人間のあり方は改善しない。なぜなら、現在でも多くのテクノロジーによって人間は制約や限界を押し広げているにも関わらず、人間のあり方が改善されていないからだ。

《本文》「伝える」
老化に関しては、現在すでに平均寿命が延びているにも関わらず、自尊死が認められていないために苦しんでいる人がいる。認知的な欠陥に関しては、例えばセンサーや監視カメラ、そして録音録画機器といった技術で多くの制約を克服した。だが、プライバシーの問題や盗撮といった犯罪が新たに生まれた。意に反する苦しみは、睡眠薬や鎮痛剤などで一時的に抑えることができても、副作用に苦しめらるのが現実だ。

《メッセージ》
人間が持てる力を拡張するために科学と技術、テクノロジーだけでは手不足である。
(382文字)

 

ポイント

論じるためのフレームは課題文から拝借できるみたいだ。

具体例は自分の論点にあっているものを選ぶ。
眼鏡や補聴器といったものでは問題にならないが、

悩みポイント

仮に苦しみを感じなくて済むテクノロジーが生まれたとしたら、果たしてそのテクノロジーによって改変された人間は「人間」であろうか。

結局「人間のしあわせとは何か」には踏み込めなかった。

追求する?なるほど、振り返ってみてはどうだろう。

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