庶民の平均世帯所得は月18万円、年間所得220万だった(普通とは何か)

未分類

平均世帯所得524万円にかかったバイアスを取り除いて「普通」を暴く

ふと気になって、とあるWebページにたどり着く。

2022年の平均世帯所得は524万円で前年から3.9%減少(国内トピックス:ビジネス・レーバー・トレンド 2024年8・9月号)|労働政策研究・研修機構(JILPT)
労働の現場で起こっている課題を、独自取材などから明らかにしています。この1冊で労働政策課題の「トレンド」が分かります。

画像:図2

まずこの図はミスっている。意図的なものかは知らない。

2000万円以上の所得をもつ人が1.3%いるのに、棒の長さが0.1くらいしかない。数値が間違っているか。グラフが間違っているか。どちらかが間違っている。

平均世帯で2000万円以上稼いでいる人が1.5%いるおかげで、平均値が釣り上げられている。

中央値が405万?

あえていうなら、データが表すのは「世帯」の所得であること。一人当たりではない。共働きをしていれば、それだけ「世帯」の所得は増える。それにしても。

中央値が405万?嘘くさい。

平均値が524万?嘘くさい。

というわけで、見方を変えてみました。

 

たまたま成功した人の成功体験を鵜呑みにするのが危ないのと同じように、神話的な成功物語と現実を区別しようというお話です。

統計学的に厳密に見ると、外れないバイアス

厳密に統計的な意味で「外れ値」かどうかは議論しません。正規分布で大小0.13%しか外れ値認定されていないからです。全然外れません。

外れ値の意味と求め方を解説|必ずしも除外することが正解とは限らない? - GMOリサーチ&AI
外れ値とは、他のデータと比べて極端な値のデータです。外れ値を含んだままデータ分析を行うと、分析結果が不正確になる恐れがあります。かといって安直に分析対象から除外してしまうと、重要な知見を見逃してしまう可能性もあるため、扱いには注意が必要です...

箱ひげ図を使った場合でも、1600万以上の値が弾かれるだけです(それでもマシだとは思いますが)

箱ひげ図とは?外れ値の見方やExcelでの作成方法まで徹底解説
箱ひげ図に関して、わかりやすく解説しています。また、Excel、Pythonでの作り方に関してもステップで説明している記事です。

統計学とは、なんだかんだ言って、バイアスを弾く工夫を提供する学問で、バイアスをいかに設定するかは、人力なのです。

正規分布ではないけれど、厳密ではないけれど、正規分布の分析手法を使います。

(上の図の裾野を左側に広げれば、正規分布として見ることもできそうだが)

正規分布とは?初学者向けにわかりやすく解説
正規分布は、統計学の初学者や統計検定2級の取得を目指す方が押さえておくべき基本的な概念の1つです。正規分布を学ぶことで、推定や検定といった統計解析の基本を理解することができます。

分析の方針は、「あまりにも庶民的でない数値(両端か、片端か)をデータに含めないとどうなるか」です。

1:95%の世帯の平均所得

95%より外側のデータを2.5%ずつ削ります。すると世帯所得の最高額が1600万円になり、100万円以下の割合も減り、次のようなデータになります。

世帯所得(「万」未満)
各世帯所得階級の合計金額
1004.4220
20014.61460
30014.52175
40012.92580
500(中央値:400に近い)10.72675
6008.52550
7006.42240
8005.82320
9004.62070
10003.71850
11002.61430
12002.31380
13001.81170
14001700
15000.8600
16000.6480
合計95.225900

結果は・・・・

平均世帯所得(年)
平均世帯所得(月)
272.058823522.67156863

この金額、どこかでみたことありませんか?

「平均」的な給与だと私は思いました。

とても実感できます。これが、庶民の「平均」でしょうか。

2:所得の中央値から68%のデータだけをとると・・・

さらに、庶民中の庶民のデータだけ取ってみましょう。

68%という数値は正規分布のデータの分布の指標であり、この数値を採用します。

ちなみに、正規分布では平均値の場所が中央値でもあるのですが、このデータは平均値が中央値ではないので、中央値である300万から400万未満の値から左右に34%ずつ取ります。

世帯所得(「万」未満)
各世帯所得階級の合計金額
200131300
30014.52175
400(中央値:300に近い)12.92580
50010.72675
6008.52550
7006.42240
8002800
合計6814320

 

結果は

平均世帯所得(年)
平均世帯所得(月)
210.588235317.54901961

月収17万という数字をどこかでみた覚えが・・・

求人情報を見ている方なら、これは正社員の「最低」賃金と同じだと思うかもしれません。

3:中央値ではなく平均値から68%を抽出すると平均所得は・・・・

1の95%を抽出したデータを2では中央値(300万以上、400万未満)を基準に68%とりました。

ここでは、1のデータの平均値(200万以上、300万未満)から68%取ってみます。

すると。。。

世帯所得(「万」未満)
各世帯所得階級の合計金額
7.70
1004.4220
20014.61460
300(中央値)14.52175
40012.92580
50010.72675
6003.2960
合計6810070

 

100万以下から足が出ました。(ここに致命的な何かがある気がします)

この時点でこの数値が意味をなしているかわかりませんが・・・

結果は・・・

平均世帯所得(年)
平均世帯所得(月)
148.088235312.34068627

この数値、どこかで見たような・・・

寄り道!生活保護、アルバイトによる給与

生活扶助が71,460円(平均年収の中央値である福島県の独身世帯の金額)

「平均年収ランキング2021」を発表、前年に比べマイナス傾向に―doda

住宅扶助が36,000円(平均年収の中央値である福島県の独身世帯の金額)

とすれば、合わせて11万。独身世帯でなければ増えます。

独身者の生活保護と同じくらいの金額です。

時給1000円で1日7.5時間、月に20日働くと15万円と比べてもいいかもしれません。

 

4:32%を端からとると・・・

2では1の中央値から68%とりましたが、しそもそも正規分布ではないので、1と同様に、端から32%を除いたデータで計算すると・・・

世帯所得(「万」未満)
各世帯所得階級の合計金額
2008.8880
30014.52175
400(中央値:300に近い)12.92580
50010.72675
6008.52550
7006.42240
8005.82320
9000.4180
合計6815600

1と2の間の数値になりました。

平均世帯所得(年)
平均世帯所得(月)
229.411764719.11764706

この数値も求人サイトで見かけますね。

 

まとめ(どの数値を使うか?)

平均世帯所得(年)
平均世帯所得(月)
1:元のデータの外側を2.5%ずつ削る(95%)27222.6
2:1のデータの中央値から68%をとる210.517.5
3:1の平均値から68%とる14812.3
4:元のデータの外側を16%ずつ削る(68%)229.419.1

生活保護(単身者・生活扶助・住宅扶助) 11万

フルタイムアルバイト 15万

3はデータが欠損しているので参考程度に。

1は庶民中の庶民ではないので参考程度に。

2は極端な数値を省いた1のデータの中央値を参考にしているので、妥当と言えば妥当。

2か4か。

5:高所得者の1割を意図的に削る。

するとどうなるか。1割という数値に根拠はありません。やってみましょう。

世帯所得(「万」未満)
各世帯所得階級の合計金額
1006.9345
20014.61460
30014.52175
400(中央値:300に近い)12.92580
50010.72675
6008.52550
7006.42240
8005.82320
9004.62070
10003.71850
11001.4770
合計9021035

 

平均世帯所得(年)
平均世帯所得(月)
233.722222219.47685185

まとめ(2回目)

5の結果を受けて、庶民中の庶民、普通中の普通の所得を次のように概算しようと思いながら。

平均世帯所得(年)
平均世帯所得(月)
230万19万

5の分析の「1割」と言う数値があまりにも根拠がないため、2と4の平均にします。

平均世帯所得(年)
平均世帯所得(月)
22018

6:68%を、下から取ると・・・???

庶民の感覚であれば、下から68%をとりたい。正規分布ではないし、貧困に近いし、そちらの方が現実的だろうという色眼鏡をつけて分析してみましょう。5の数値を1割ではなく、32%にした場合。

世帯所得(「万」未満)
各世帯所得階級の合計金額
1006.9345
20014.61460
30014.52175
400(中央値:300に近い)12.92580
50010.72675
6008.42520
合計6811755

 

平均世帯所得(年)
平均世帯所得(月)
172.867647114.40563725

これは時給1000円のアルバイトをフルにこなした時の月収に近いですね。

 

 

7:95%を下から取ると???

ついでなので。

世帯所得(「万」未満)
各世帯所得階級の合計金額
1006.9345
20014.61460
30014.52175
40012.92580
50010.72675
6008.52550
7006.42240
8005.82320
9004.62070
10003.71850
11002.61430
12002.31380
13001.5975
合計9524050

 

平均世帯所得(年)
平均世帯所得(月)
253.157894721.09649123

 

 

結論、日本の世帯の真の庶民の「平均所得(月)」は、「生活保護」+7万円の18万である。

びっくりする結果ですが、世帯の平均所得が524万という数値にかかったバイアスを取り除いた結果、庶民の「平均」、つまり「ふつう」が見えました。生活保護を単身者世帯で計算しましたが、17万、22万という数値が一人の月収の額と(なぜか)近似していたことを思えば、この結論は妥当だと評価しておきます。

7万円の、重みを感じます。

この7万円の差は、いったい何なのか。必要最低限ではないこの月7万を、どのような営みに変えるのか。生き方を問われている気がします。

 

反省、振り返り

「単独世帯」が約40%:高齢者の単独世帯の増加|エッセイ一覧|公益財団法人 生命保険文化センター
公益財団法人生命保険文化センターは、公正・中立な立場で生活設計と生命保険に関する様々な情報を提供しています。(設立1976年)

202309図1_一般世帯の家族類型別割合の推移

単身世帯が4割であること、高齢者の人口が多いこと、大学進学者の半数以上は奨学金という借金を背負っていること、そもそも元のデータの標本に偏りがある可能性などを勘案すると、このデータ分析は不十分と言わざるを得ませんが、与えられたデータを使って「平均524万」にかかっているバイアスを取り除くことはできたと思います。

アメリカの格差はもっとすごい、と言われているらしいです。若いみなさんは、日本でどのように暮らしていくのでしょうか。そもそも、お金を何に使うのか。どんな社会を作りたいのか、という視点がこの分析には抜け落ちています。

「普通が一番」

という言葉を聞くことがあります。

その普通とは何かを、改めて考えるきっかけになれば幸いです。

今回は、金銭的な、「普通」のお話でした。

 

もっと大事なことは、精神的な「普通」だと、私は思います。

精神的健康さ、精神的な成熟が、経済的な安定や発展以上に、私には問題であると思われます。

 

 

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました